人事労務

リファラル採用の法的な注意点と、成功させる方法【弁護士解説】

リファラル採用という新しい採用手法が盛んになっています。

新入社員の採用といえば求人媒体(雑誌やインターネットなど)への掲載が一般的でした。リファラル採用では、広告費がかからず、採用のミスマッチを回避できるなど、多くのメリットがあり、各社で導入が進んでいます。

人づてに採用をする方法は、リファラル採用というと新しい言葉に聞こえますが、昔から「縁故採用」という言葉でよくおこなわれてきました。

しかし、新規人材を多くかき集めるだけでなく、採用後も社内で活躍してもらってはじめてリファラル採用の成功といえます。リファラル採用のような新しい手法でも、求人採用に関する職業安定法・雇用対策法などの多くの労働法が関係します。

今回は、リファラル採用を効果的に実施し、成功させるコツと、法的な注意点について、企業法務に詳しい弁護士が解説します。

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リファラル採用とは?

リファラル採用(referral recruting・リファーラルリクルーティング)とは、いわゆる縁故採用の一種であり、自社の従業員から、採用候補者を紹介してもらう制度のことをいいます。

「リファラル(referral)」とは、英語で「紹介」、「推薦」という意味です。

古くは、「社員紹介制度」とも呼ばれていました。

このような採用手法が「リファラル採用」という新しい言葉で呼ばれて話題になったのは最近ですが、リファラル採用の制度を整備している会社は、昔から多く存在しました。

また、リファラル採用の制度が用意されていない会社であっても、社員の入社動機が「知り合いがその会社で働いていて、誘われたから」という人は少なくありません。つまり、リファラル採用が流行する前から、従業員による社員紹介は珍しいことではありませんでした。

リファラル採用の法的な注意点

リファラル採用も、採用手法の1つである以上、会社の求人・募集・採用のときに注意しておかなければならない法律上の注意点が、そのままあてはまります。

会社には「採用の自由」があり、「いつ、誰を、どのような条件で採用するか」は自由です。

しかし、男女差別、求人詐欺(応募した労働条件と実際の労働条件とが大きく異なる)などは、雇用対策法、男女雇用機会均等法、職業安定法といった労働法で禁止されています。そこで、リファラル採用の法的な注意点について、弁護士が解説します。

違法なインセンティブ(紹介料)支給を行わない

リファラル採用の制度では、採用者を紹介してくれた社員に対して、インセンティブとして紹介料を支払うことが一般的です。紹介料の支払のときには、とても重要な注意点があります。

職業安定法では、次のように、社員の募集に従事する従業員に対して、賃金以外の報酬を支払うことを禁止しています。

職業安定法40条(報酬の供与の禁止)

労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

そのため、会社が、紹介者に対して「紹介料」などのインセンティブを支給するときには、「賃金として」支払う必要があります。

「賃金として」支払うためには、紹介料などのインセンティブが、基本給、営業手当、通勤手当などのその他の賃金と同様に、就業規則や雇用契約書に定められ、労働契約の内容となっている必要があります。

「紹介料」名目以外に、リファラル採用のための交通費や飲食費について、実費を支給する制度も有効です。

インセンティブ(紹介料)の相場

リファラル採用を社内制度かするにあたっては、採用の際に支払うインセンティブ(紹介料)を、適正な金額に設定しておく必要があります。高額すぎるインセンティブ(紹介料)は、賃金として適切でなく、違法となるおそれもあります。

一般的に、インセンティブ(紹介料)の支給額は、「3万円から10万円程度」が多いです。

紹介料が低すぎると、リファラル採用の紹介が出にくくなってしまう一方で、紹介料が高すぎると、逆に、次のようなリファラル採用のデメリット・リスクが顕在化してしまいます。

従業員間の公平感が失われ、一部の従業員と同質な人材だけが集まった会社になってしまうと、「閉塞感」が高まってしまうので注意が必要です。

  • 紹介料目当てで、会社の風土、社風にあわない採用者を紹介する
  • 紹介料をもらうために無理矢理入社させる
  • リファラル採用を紹介できた人とできなかった人の労働条件の格差が広がる

リファラル採用のルールを明確化する

リファラル採用のルールは、きちんと明文化して、労働者にも周知する必要があります。

さきほど解説したとおり、リファラル採用の紹介料は「賃金」であり、重要な労働条件の1つですから、当然です。

具体的には、就業規則、賃金規程などを作成し、「賃金」の1種類として、その金額、支払基準、支払時期を明示しておきます。

企業文化にあった人材を、リファラル採用で紹介してもらうためには、リファラル制度の趣旨、目的を、社員に理解してもらい、会社の文化として根付かせる必要があります。

1事業場あたりの社員数が10名を超える場合、就業規則を労働基準監督署に届け出る義務があります。

紹介者と採用者の関係に注意

リファラル採用は、紹介者と採用者との間の、人間関係の密接さに着目し、これを会社経営においてもプラスに働かせるための制度です。

近しい人間関係にあることは、メリットとなる場合も多くありますが、しかし、その人間関係がマイナスにはたらくことも少なくありません。そのため、採用者の入社後も、紹介者と採用者との関係に注意が必要です。

紹介者と採用者との人間関係の近さが、会社内での労働問題の火種となってしまうケースとして、例えば次のケースをご紹介します。

  • 紹介したことを恩に着せて肉体関係を迫るセクハラが起こる
  • 紹介したことで上下関係が明確になりパワハラが起こる
  • 会社内の他の上司を共通の敵にして、会社の秩序を乱す

リファラル採用のメリット

リファラル採用という手法は、会社側(企業側)にとってはもちろんのこと、採用をされる新入社員、紹介をする既存社員にも、それぞれメリットがある「三方よし」の制度です。

ここでは、特に会社側(企業側)が享受できる、リファラル採用のメリット、利点について、弁護士が解説します。

採用コストを抑えることができる

リファラル採用では、求人広告などの媒体に出稿する必要がありません。また、求人のための説明会を開催するなどの手間も省略できます。派遣会社に人材紹介を依頼する場合のフィーと比べてもとても低額です。

これらの採用にかかる費用に比して、紹介者に支払われるインセンティブ(紹介料)はそれほど高額にはならないことが一般的です。

そのため、リファラル採用の大きなメリットとして、採用コストを抑えることができる点があげられます。

採用のミスマッチが起こりづらい

リファラル採用に成功すると、採用者と会社との間でのミスマッチは起こりづらくなります。

これは、もともと既に会社ではたらいている紹介者が、採用者に対して、入社前に会社の状況について詳しく説明することが期待できるからです。

一方で、不採用とした場合に、紹介者と会社との関係が悪化するおそれがあるというデメリットがあります。

また、既存社員による社風理解が不十分な場合や、紹介者と採用者との人間関係が希薄な場合には、リファラル採用であっても採用のミスマッチが起こり得る危険があります。

採用者の定着率が高い

リファラル採用の場合には、採用者が入社した後には、紹介者によるアフターフォローが期待できます。「自分の会社に紹介したからには、責任もって面倒を見よう」というわけです。

むしろ、そのようなアフターフォローすら期待できない人間関係であれば、リファラル採用で紹介してもらうべきではありません。

リファラル採用を促進することは、従業員の離職率を低下させ、定着率を高め、「人手不足」を回避するための方策として有効です。

他方で、紹介者が先に退職してしまった場合に、採用者のやる気、モチベーションが低下してしまう可能性があるというデメリットがあります。

優秀な人材を発掘できる

リファラル採用の場合には、通常の採用活動では、そもそも応募しないような人材を採用することができます。

通常の採用活動の場合、そもそも転職を希望していたり、その業界に興味関心がある人材であったりしなければ、会社の求人広告を見ることもなく、応募してくることもありません。

転職市場には出てこない「優秀層」に対して、「同窓」、「同学年」、「同年代」などの繋がりから、ダイレクトに採用のオファーをかけることが、リファラル採用であれば可能です。

リファラル採用のデメリット

一方で、リファラル採用にはデメリットもあります。デメリットを理解せず、十分な知識もなくリファラル採用をはじめると、効果が薄いだけでなく、法律違反となってしまうリスクもあります。

そこで最後に、リファラル採用のデメリットについて、弁護士が解説します。

紹介者と応募者の関係悪化

リファラル採用で応募してきた人としては、「紹介なのだから内定がもらえて当然」と思うかもしれません。しかし、紹介を受けたものの、実際に面談をしてみたら、どう考えても会社とはミスマッチであった場合、内定を得られない可能性があります。

このように不採用とした結果、紹介者と応募者の関係が悪化し、かえって紹介者から会社が恨まれてしまうおそれがあります。

リファラル採用で入社したあと、紹介者から不当なはたらきかけやハラスメントがあったり、紹介者が派閥を形成し、会社の空気が悪くなってしまうというデメリットもあります。

紹介者の退職によるモチベーション低下

リファラル採用がうまくいった場合には、紹介者が会社内にいることによって仕事へのやる気があがることが期待できます。

しかし、「紹介者がいるから」といった理由でのやる気は、紹介者が退職してしまうと、モチベーション低下につながってしまうデメリットがあります。

リファラル採用がうまくいくに越したことはないですが、入社後には、リファラル採用であろうとなかろうと、社風、風土を理解し、しっかりとはたらきつづけてくれる人材を採用しなければなりません。

インセンティブによる不公平感

リファラル採用で得られるインセンティブ(紹介料)が不相当なほど高いと、リファラル採用でたくさん紹介して多くのインセンティブ(紹介料)を得た人に対して、社内から不平不満がうまれる可能性があります。

人の性格はさまざまで、人付き合いの幅の広い人から狭い人までいます。リファラル採用をたくさんできることで、収入に大きな格差ができてしまうと、その不公平感が社内の空気を悪化させてしまいます。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、話題になっている「リファラル採用」について、特に、法的な問題点、注意点を、弁護士が解説しました。

「採用コストの低減」という短期的な目的で、リファラル採用を推し進める会社が多いですが、法的な面で考えると、デメリットも少なからずあります。流行に流されることなく、慎重に制度設計を組み立てなければなりません。

デメリットを回避するための重要なポイントは、リファラル採用であっても、通常の採用活動と同様、法令遵守(コンプライアンス)の姿勢で臨むことです。

中長期的な視点で、成功する正しい「リファラル採用」の制度設計をお考えの会社は、ぜひ一度、企業法務の実績豊富な弁護士にご相談くださいませ。

「採用内定・試用期間」の法律知識まとめ

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