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人事労務

履歴書が真っ赤な嘘(虚偽)だった新入社員…解雇できる??

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4月になり、新入社員が多く入社してくる季節となりました。この解説をご覧の会社様の中にも、新入社員を採用し、戦力として大きな期待を寄せている会社、経営者の方も多いのではないでしょうか。

転職者の中途採用も、新卒社員の新入社も、この4月がひとつの区切りとなる時期です。

新しい社員を採用し、内定を出して入社してもらうときには、その社員の情報を知るために、履歴書、職務経歴書などを提出してもらうのが通常ですが、その内容が全くの嘘であったら、その社員は御社には合わないおそれもあります。

更には、経歴に嘘をつき、履歴書に虚偽の記載をするような新入社員は、会社にとって不利益な経歴を隠して入社している可能性もあります。

そこで今回は、新入社員の入社後、履歴書の記載が全くの嘘(虚偽)であったときの対応と、その社員を解雇にしたときの問題点について、企業の人事労務に詳しい弁護士が解説します。

1. 入社時に履歴書をもらう理由

会社が、新入社員を採用するときに、社員から履歴書をもらう理由は、選考が目的です。

特に、会社が求めている人材と、その社員とがマッチングしているかどうかを、履歴書を検討することによって判断し、適切な人材を採用することが目的です。

これに加えて、中途採用者の転職の場合には、職務経歴書を取得することが一般的です。

そのため、履歴書、職務経歴書は、数いる求職者の中から、採用内定者を選ぶ際にとても重要な参考書類ですから、この2つに書かれた情報が実は嘘であったということになれば、会社としては大問題です。

そこでさらに、このような新入社員による重大な違反行為に対して、「解雇」という厳しい処分をもってあたることができるのかが問題となります。この点についても、弁護士が次のとおり解説します。

2. 履歴書の詐称で解雇はOK?不当解雇?

以上のとおり、履歴書、職務経歴書の重要性からすれば、会社経営者の立場からすれば、履歴書にささいな詐称があったとしても、もはやそのような社員には入社してほしくない、というのが本音でしょう。

しかし、「解雇」は、労働者にとって、その身分を失わせる非常に重大な処分であって、労働者に与える不利益は、会社が下す処分の中でも最も大きいものです。そのため、解雇は慎重に行わなければ「不当解雇」とされても仕方ありません。

2.1. 解雇は3種類ある

「解雇」とひとことでいっても、その性質と解雇理由によって、解雇はおおまかに三種類に分類することができます。

解雇の三分類は、次のとおりです。

  • 普通解雇
    :労働者側の事情を解雇理由とする解雇のうち、会社の従業員として適切ではないことを理由とする解雇のこと。
  • 整理解雇
    :会社側の事情を解雇理由とする解雇のこと、例えば、経営状況の悪化、担当事業の廃止など。
  • 懲戒解雇・諭旨解雇
    :労働者側の事情を解雇理由とする解雇のうち、強度のセクハラ、業務上横領などの企業秩序順守義務違反を理由とする解雇のこと

「履歴書に嘘の事実を書いた」という解雇理由は、労働者側の事情ですから、この解雇の三分類のうち、普通解雇、もしくは、懲戒解雇が適切ということになります。

「履歴書に嘘の事実を書いた」という問題行為をとらえて、企業秩序違反と考えるのであれば、「懲戒解雇」でもよいでしょうが、「普通解雇」とすることも可能です。

2.2. 「履歴書が虚偽」は解雇理由になる?

懲戒解雇をはじめとした解雇をするときには、会社の就業規則に記載された解雇理由にあてはまる行為を労働者が行っている必要があります。つまり、「履歴書に嘘(虚偽)を書いた」ことが、就業規則の解雇李湯に該当する必要があります。

そのものズバリが就業規則に記載されていなくても、「その他、前各号に準じる行為」、「その他、会社の社員として不適切な行為」などといった一般条項にあてはまると考えることができるケースもあります。

解雇理由、解雇の相当性を検討してからでないと、むやみやたらと解雇できないのは、解雇自体が、「解雇権濫用法理」によって制限されており、厳しい制限が加えられているからです。

2.3. 「履歴書が虚偽」で解雇は相当?

解雇理由に形式的にあてはまるような履歴書の詐称があったとしても、これによって即座に解雇できるわけではありません。

解雇理由にあてはまるとしても、その問題社員の行為が、解雇を相当とする重大なものである必要があります。つまり、「重要な経歴」についての嘘でなければ、履歴書に嘘を書いたとしても解雇できないのです。

裁判例で、重要な経歴と認められ、履歴書の嘘を理由とした解雇が有効と認められたものには、最終学歴、犯罪歴などがあります。

3. 解雇が許される重要な嘘とは?

さきほど解説しましたとおり、たとえ履歴書に嘘を書いてしまった新入社員がいたとしても、これをもって解雇という重大な不利益を与えるためには、乗り越えなければならない高いハードルがあるとご理解ください。

つまり、解雇権濫用法理という厳しいルールのもとで、解雇が許されるほどの重要な嘘が、履歴書に書かれていなければなりません。

解雇が許されるほどの重大な経歴についての嘘であるかどうかは、会社がなにを重要視し、採用面接時にしっかり説明しているかどうかによりますから、新入社員に、「重要な経歴である。」ことを理解してもらう必要があります。

履歴書に嘘を書くと解雇が許されるほどの重大な経歴には、たとえば次のようなものがあります。

  • 「四年生大学卒業」を採用・募集要件としていたが、「高卒」であるにもかかわらず「大卒」と履歴書に嘘を書いた。
  • 「犯罪歴」についての記載欄があり、逮捕・勾留され実刑を受けたことがあるにもかかわらず、履歴書を空欄とした。
  • 「経験者」の中途採用枠であったにもかかわらず、存在しない職歴を記載し、経験者であるように装った。

なお、これらの、裁判例などにおいても重要な嘘であると認められた履歴書の嘘であっても、会社側の見落としがあったり、会社側の採用・募集の態様に問題があったりするケースでは、これを理由とした解雇が認められないおそれがあります。

履歴書に嘘が書いてある可能性を十分に検討した上で、疑問点がある場合には、採用面接で徹底して「履歴書のこの記載に嘘はないか。」という観点から聞き取りをしなければなりません。

採用面接のときにも、履歴書に書かれた嘘を上塗りしていた場合には、その新入社員の嘘が発覚すれば、解雇が有効となるケースが多いでしょう。

4. 数年経過した後、履歴書の嘘が発覚したら?

裁判例の中には、入社してから数年経過した後であっても、履歴書に嘘が書かれていたことが発覚したことで、懲戒解雇を有効としたケースもあります。

しかし、入社してから数年経過し、その間、問題なく働くことができており、評価も悪くない、といったケースでは、その嘘のもととなった経歴は「重要な経歴ではなかった」と判断されてしまうおそれがあります。

特に、新入社員であって、試用期間を設けているような社員のケースでは、試用期間を問題なく経過した後になって、会社に直接影響のないような履歴書の嘘を理由として解雇をすることは、「不当解雇」とされる可能性が高いといえます。

5. まとめ

今回は、履歴書に虚偽(嘘)の記載をした新入社員に対する解雇が有効か、それとも、違法な不当解雇と判断されてしまうのかについて、その判断基準を弁護士が解説しました。

いざ、新入社員が履歴書に嘘を書いていたことが発覚した場合に、すぐに解雇をすることができるようにするためには、日本の労働法における解雇を制限するルール(解雇権濫用法理)について、日ごろから正しく理解しておく必要があります。

新入社員が、入社直後であるけれども、もはや解雇を検討せざる状況であるという会社経営者の方は、企業の人事労務を得意とする弁護士に、お早めにご相談ください。

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