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なぜ起業に失敗するのか?起業の失敗例と、原因ごとの対策を解説

ベンチャーで起業し、大成功を夢見る人は多くいます。しかし、現実は甘くはなく、起業を志した多くの人は、失敗の憂き目を見ています。大成功した起業家もまた、過去には多くの失敗を積み重ねています。全く失敗せずに成功した人のほうが、むしろ少ないでしょう。

起業の失敗には、取り返しのつかない大失敗から、成功の糧になる失敗まで様々あります。なぜ起業に失敗するのかを事前に理解し、その原因ごとに対策を講じておけば、リスク少なく起業を進められます。そのためには、先輩起業家の話を聞くなどして起業の失敗例を知るのが有益ですが、弁護士のアドバイスも役立ちます。

起業に確実なルールはありません。弁護士は、会社法など、守るべき法律の定めのアドバイスはできますが、法律はあくまで禁止事項や最低限の約束ごと。法律を遵守したからとて必ず成功するとは限りません。とはいえ、ベンチャー法務を多く扱う弁護士から見て、起業に失敗しやすいケースによくある理由、原因を知るのは、成功への近道といえます。

今回は、起業の失敗例を知り、リスクを減らすためのポイントを、企業法務に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 起業しても、その生存率は20年で約50%であり、多くの起業は失敗している
  • 起業が失敗する理由のうち、人的トラブル、経済面の問題が特に大きなリスクにつながる
  • 起業の失敗を回避し、成功するには、事前に資金計画・事業計画を立て、弁護士に相談する

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起業のほとんどが失敗といっても過言ではない

起業しても、長く生存できる企業ばかりでなく、上場したりM&Aして高額で売却されたりする会社はごく少数です。

帝国データバンクの調査によれば、5年後の企業の生存率は81.7%です。10年後には約70%、20年後には約50%まで低下します。つまり、企業から20年経過している企業でも、その半数は失敗し、市場からの撤退を余儀なくされる状態です。

また、この統計は、帝国データバンクに掲載されている企業のものですから、ベンチャーやスタートアップ、零細企業などを含めれば、生存率はもっと低い可能性があります。

起業して約半数は、20年も事業を続けられないのです。まして、経験の浅い、起業直後の会社は特に、失敗することが多くあるでしょう。また、会社が倒産するほどでなくても、事業に失敗はつきもので、全く失敗なく継続できることは稀です。

みずほ情報総研株式会社の行った、令和2年度グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業(起業家精神に関する調査)においても、起業家に対して高い地位と尊敬を持つと回答する人が多い(67.9%)一方で、起業が失敗することへのおそれから、起業を躊躇していると回答した人も少なくありません(38.5%)。

起業が失敗する理由

起業が失敗する理由は、数多くあります。しかし、ほとんどの失敗は、起業家が誰しも通る道で、努力して乗り越えるべきケースといえます。マーケティングや集客、営業など、経営面の失敗がこの例です。

しかし、法律面の失敗には、リスクの高いものもあります。株式会社は、株主がその所有者であり、株式数に応じて重要事項の決定権を有します。株式に関する失敗は、経営についての自身の決定権を失うことにつながるため、やり直しが効きません。よく準備していれば、起業直後の失敗は回避できるケースがほとんどです。

事業規模が身の丈に合わない

まず、事業規模が身の丈に合わないことが理由として挙げられます。

起業直後、素晴らしいアイディアを思いつくと、商品やサービスを売り出したい気持ちで、広告費をかけすぎてしまうケースが典型例。資金力を考えずに事業に乗り出せば、起業は失敗してしまいます。また、起業当初から完璧を目指しすぎて大きな原価をかけると、利益は少なくなるのは当然です。

人事労務や総務など、会社の維持に不可欠な間接部門も、会社の規模が大きくなる将来には必要となるものの、起業当初から多くの費用をかけるべきではありません。「資金を投入すべきかどうか」をシビアに判断しなければ、身の丈に合わない事業規模が、資金繰りの悪化による倒産を早めてしまいます。

起業を成功させるため、法務サービスは顧問弁護士にお任せください。

資金調達に失敗した

思うように資金調達できずに、起業に失敗するケースもあります。例えば次の場合です。

  • 株式数が少なく、個人投資家から少額の出資が受けられない
  • ストックオプションを与えた社員の持株比率が高くなり過ぎる
  • 担保になるものを準備できず、融資を受けられない

将来性の高いビジネスで資金調達に苦労しない例もあるものの、それでもなお、事業の価値が理解されなければ資金調達はできません。少なくとも起業初期から、外部からの資金調達を予定するなら、柔軟で小回りの効きやすいようにしておくべき。1株あたりの出資額を高くしすぎないよう、適切な株式数を設定しなければなりません。スモールスタートであるほど、起業した後で、多様な資金調達方法を検討できます。

ベンチャーの起業では、VCや個人投資家から出資を受けたり、共同創業者を株式を分け合ったり、重要な社員にストックオプションを発行したりと、エクイティによる資金調達を有効活用する必要があるからです。

資金調達の種類(デットとエクイティ)については次に解説します。

キャッシュフローを把握していない

キャッシュフローを把握しないことも、起業の失敗につながります。

売掛金の回収は、すぐにはできないことが多く、それなのに仕入れにコストがかかっていては、すぐに払うべき金銭が増加し、資金が不足してしまいます。特に、起業直後は、交渉力も弱く、支払いサイトを交渉されると、自社への着金を先延ばしにしたり、場合によっては無償で提供したりせざるを得ない場面もあるでしょう。

このとき、将来的には回収を見越していても、手元の現金がなくなれば、倒産してしまいます。取引の数が増加すれば、それだけ複雑になり、キャッシュフローの把握は更なる慎重さを要します。

黒字倒産については、次の解説をご覧ください。

共同経営者間で意見が合わない

起業において、共同創業する例はよくあります。しかし、たとえ友人同士でも、共同創業は多くのリスクがあり、次のような起業の失敗が起こりやすい場面です。

  • 共同経営者と株式を平等に分け合い、いずれも過半数の決議を取れなくなった
  • 共同経営者と意見が異なり、リスクをとる決断ができない
  • 恩人としていた人に株式を与えすぎ、会社を乗っ取られた

共同経営者がそれぞれ株主でもあると、意見が合わないと内部分裂します。

一定割合以上の株式には、企業経営の重要事項を決める権利が与えられます。株主総会の普通決議には、株主の過半数の賛成を要し、特に重要な事項に適用される特別議決は3分の2の賛成を要します(そのため、3分の1の株式を有する株主は「拒否権を持っている」と表現されます)。このことを理解し、持株比率を少なくしすぎないようにすべきです。

完全に分裂せずとも、決定のスピードが落ち、起業初期に大切な機動力を失ってしまいます。

共同経営者の仲違いを避けるため、創業株主間契約の解説を参考にしてください。

創業期の社員に裏切られる

創業期の社員の裏切りで、起業に失敗するケースもあります。創業期の社員は、苦楽をともにした仲間で、重要性は高いことでしょう。その分、経営が軌道に乗ってからだと、裏切られたダメージはさらに拡大します。起業直後を支えてきた社員は、会社の重大な秘密を握っており、次のような裏切りをしがちです。

  • 企業秘密を漏えいされる
  • 会社の悪い評判を流される
  • 競業他社に転職されたり、同業で独立されたりする
  • 重要なポジションの社員の引き抜きを画策される

さらに、裏切った社員に、優秀な人材としてストックオプションや株式を与えていたりしたなら、その処理もしなければなりません。

社員の引き抜きについて、次に解説しています。

起業で失敗した経営者のその後は?

冒頭で説明の通り、起業に失敗がつきものであるために、起業失敗への不安感が大きくなりすぎると、本来であれば成功したビジネスでも、判断の誤りから失敗の可能性を上げてしまいかねません。そのため、恐怖心を大きくしすぎないよう、「起業で失敗したらどうなるのか」、つまり、起業で失敗した経営者のその後について理解してください。

会社が負債を支払えないと、破産手続きを進めることとなります。本来、法人と、代表者個人とは別人格なため、法人の債務は、代表者個人には請求されないのが原則。

しかし、このとき、会社の債務について経営者が保証していると、一緒に破産せざるを得ず、当面の間は再起が難しいケースもあります。また、起業の失敗を避けようと、財産隠しや帳簿の改ざんなど不正を行っていると、その責任を追及され、やはり、失敗後の再帰が遅れてしまう可能性があります。

一方で、起業が失敗に終わっても、再びやり直せるケースもあります。個人破産してもすべての財産がなくなるわけではなく、自由財産として一定の財産を残すことができます。再挑戦支援資金や、無担保無保証で融資を受けられる新創業融資制度など、公的な制度も利用できます。もし、破産の前に交渉によって任意整理できるなら、一時的な入金遅延のみで解決できる可能性もあります。

破産後に、再び起業する方法は、次の解説をご覧ください。

起業失敗のリスクを回避し、成功するには?

最後に、起業失敗のリスクを回避し、成功の確率を上げるために、講じるべき対策を解説します。

資金計画を立てる

前章の通り、株式に関する失敗、すなわち資本政策の失敗は、後戻りできません。というのも、議決権を一度与えれば、重要な事項を株主抜きで決められず、反対されると経営者が一人で決め直せないからです。

まずは手持ちの現金を把握し、資金繰りを検討します。そして、どのタイミングでいくらの資金が必要なのか、適切な資金計画を立ててください。その上で、必要な金額を、出資ないし融資を駆使し、どう調達するか検討するなかで、持株比率を考慮しながら必要な判断をするようにします。

事業計画を立てる

あわせて、調達した資金を使い、ビジネスをどう発展させるかといった事業計画も、起業の失敗を避けるのに欠かせません。事業計画を立てるには、起業のゴール、つまり、目標を定め、そこから逆算して考えるべきです。

ベンチャー、スタートアップでは、起業のゴールは上場(IPO)やM&Aといった目標でしょう。しかし、起業直後の失敗は、長期的に見てもそれらの目標を妨げるおそれがあります。無計画でその場しのぎの対応では、最終目標まで到達できません。

まずはスモールスタートする

はじめての起業では、失敗なしに成功するのは難しいでしょう。最初から大きすぎる事業を始めるのは、手に余るおそれがあります。そのため、まずはスモールスタートすることが成功のポイントです。

いきなり金融機関から大きな金額を借り入れると、いざ思うように売上が立たずに返済できなくなったときのリスクが過大となり、正しい経営判断をできなくなってしまいます。まずは自己資金の限度でサービスを開始できないか、検討してください。許容できるリスク、小さな失敗を積み重ねることが大切です。

副業が容認されている企業では、まずは週末起業などで始める手もあります。

顧問弁護士に相談する

起業の失敗は、事実上の不利益を被るだけでなく、法的な責任が発生します。

経営判断は、自身で行うことができますが、法律知識を有しない方が、法的リスクを排除して起業を進めるのは困難です。そのために活用すべきなのが、顧問弁護士です。顧問弁護士を付けることは、着手するサービスの法的リスクを事前に検討するほか、トラブルになった際に法的手段を利用でき、取引先など社外への牽制としても機能します。

顧問弁護士に相談すれば、法律面の心配事なく、ビジネスだけに集中して取り組めます。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、ベンチャー、スタートアップの起業で起こりがちな失敗の事例を紹介し、その原因ごとに対策を解説しました。

起業には失敗がつきものです。ベンチャー精神をもって起業するなら失敗を恐れてはいけません。しかし、事前に知ることができれば回避できる失敗もあります。資本政策の失敗など、後戻りのできない大失敗は、せっかくの起業を台無しにしてしまう危険のとても高い問題です。

起業の失敗と成功とは、起業直前・直後から常に隣り合わせです。決して、会社が大規模になる前でも、失敗例は多く潜むもので、そのリスクは計り知れません。起業時点からしっかり備え、ステージに応じた策を講じる必要があります。失敗を早めに発見し、適時に修正するには、顧問弁護士の活用をぜひ検討ください。

この解説のポイント
  • 起業しても、その生存率は20年で約50%であり、多くの起業は失敗している
  • 起業が失敗する理由のうち、人的トラブル、経済面の問題が特に大きなリスクにつながる
  • 起業の失敗を回避し、成功するには、事前に資金計画・事業計画を立て、弁護士に相談する

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