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調停(和解)を有利に進めるため、労働審判前に会社が考える方針のポイント

労働審判は、労働者保護のためにスピード解決を目指す、「話し合い」の手続きです。

労働審判では、裁判のように「判決」を目指すのではなく、あくまでも「話し合い」の結果、「調停」という合意で解決することが一般的です。

そこで、調停(和解)の話し合いを会社側(使用者側)の有利に進めるためには、労働審判前に、あらかじめ方針をきちんと準備しておかなければなりません。

調停(和解)を有利に進めるための、労働審判前に会社が考える方針のポイントを、企業の労働問題を得意とする弁護士が解説します。

「労働審判」の法律知識まとめ

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調停とは?

「調停」という場合、通常の民事事件で行われる「民事調停」をイメージする方がほとんどかもしれません。

しかし、労働審判では、その「労働審判手続」の中に、「調停」を含んでいるとお考えください。

「調停」というのは、裁判所で行われる、裁判所が仲介してくれるお話し合いと考えて頂くとわかりやすいです。労働者と会社の双方が、労働審判委員会の示す「調停案」に同意すれば「調停成立」となります。

労働審判での「調停」の重要性

労働審判の手続きには「調停」が含まれていると解説しましたが、この「調停」こそが、労働審判の手続きの流れの中でも最重要です。

一般的な「民事調停」であると、合意が不成立であると、その段階で「調停不調」となり、解決に至らないまま終了となります。

これに対して、労働審判の場合には、調停で話し合いができない場合、「審判」という手続きに移行し、労働審判委員会による「労働審判」という最終判断が下されます。

そして、この「労働審判」の内容が、あらかじめ示された「調停案」と同様であることが多いため、「調停」にも、相当程度の(事実上の)拘束力が生まれるのです。

妥協(譲歩)する気が会社側にあるか

労働審判の「調停」を有利にするために、まず最初に考えておくべき方針は、「妥協(譲歩)する気があるかどうか。」という点です。

第1回期日の後半から、「調停」の手続きに入っていくことが通常ですので、遅くとも第1回期日に参加するまでには、「妥協(譲歩)できるか。」の方針を決めておく必要があります。

妥協(譲歩)する気がない場合

会社側がそもそも「妥協(譲歩)する気は一切ない。」というのであれば、労働審判を下してもらう以外に方針はなく、「調停」が成立する余地はないからです。

この場合には、会社側(使用者側)に有利な労働審判を下してもらえるよう、できる限り早く、次の2つを準備し、裁判所に提出して検討してもらわなければなりません。

  • 会社側に有利な内容を記載した答弁書
  • 事前に収集した証拠

なお、全く妥協(譲歩)ができない場合には、最終的に「労働審判」が下され、会社の不利な解決となった場合には、「異議申立」を行って訴訟に移行することを検討してください。

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一定の妥協(譲歩)ができる場合

労働審判が「話し合い」の手続きである以上、お互いにある程度の妥協(譲歩)をして解決することが前提となっています。

そのため、労働審判委員会も、裁判所における話い合いをできる限り行うよう勧めてきます。

話し合いに応じる余地がある場合には、「調停」の手続きの中で、交渉可能であることを労働審判委員会に積極的に伝え、裁判官による仲介を希望しましょう。

調停(和解)で妥協(譲歩)する会社側のメリット

労働審判を申し立てられてしまうほど労働トラブルが激化している状態で、「少しも妥協(譲歩)したくない。」、「徹底的に戦いたい。」という会社経営者の方のお気持ちは十分理解できます。

しかし、調停(和解)である程度の妥協(譲歩)をすることには、会社側(使用者側)にとってもメリットが少なくありません。

早期解決

労働審判の中で、調停(和解)で一定程度妥協(譲歩)することの最大のメリットが、「早期解決」です。

調停(和解)をうまくまとめなければ、「労働審判」が下されることとなり、さらにこれに対して労使いずれかが「異議申立」をすれば訴訟に移行してしまいます。

労働問題が「訴訟」となると、おおむね1年、もしくはそれ以上かかるケースも少なくありません。その分、弁護士費用、担当者の人件費など、多くのコストがかかります。

柔軟な解決

調停(和解)で妥協(譲歩)することの2つ目のメリットが、「柔軟な解決」です。

調停(和解)で労働審判を解決させる場合には、必ずしも、法律に厳格に従った解決ではなくてもよいものとされています。特に、「不当解雇」の労働審判についての次のケースが典型例です。

例えば…

「不当解雇」を労働者側が争う労働審判では、労働者側の主張は、「地位確認」すなわち、「解雇は無効であるから、労働者の地位にあり続ける。」という争いです。

しかし、地位確認の労働審判を申し立てた労働者の大半は、「解雇」されてしまった会社でもう一度働きなおす気は、本音としては無いことがほとんどです。この点は、会社側(使用者側)も同様でしょう。

法律による解決であれば、解雇は「有効」、「無効」のいずれかしかないわけですが、「調停」による柔軟な解決であれば、退職を前提とした金銭解決とすることも可能です。

リスクの回避

裁判手続において、最終的な結論を完璧に予想することは、弁護士でも非常に困難です。

そのため、「一切の妥協(譲歩)をしない。」と最初から決めてしまうことは、非常に「ハイリスクハイリターン」な賭けだといえます。

程度にもよりますが、一定程度の妥協(譲歩)をすることは、このリスクを下げることにつながります。労働審判を下してもらうよりも調停による解決を目指した方が、「ローリスクローリターン」な勝負をすることができます。

調停の方針で、会社が決める2つのライン

ここまでお読み頂ければ、労働審判を「調停」で解決することは、会社側(使用者側)としても目指すべき解決であり、「調停」の準備を事前にしておくことの重要性は、よく理解いただけたことでしょう。

そこで、調停の方針を定めるにあたって、事前に会社が決めておかなければならない2つのラインについて、弁護士が解説します。

妥協(譲歩)した提案

「調停」を進めるにあたっては、労使双方がお互いに、妥協(譲歩)した提案を出し合いながら交渉することが一般的です。

そこで、まずは会社の方から提案してもよい「妥協案(譲歩案)」を、あらかじめ準備しておかなければなりません。

「調停」の初期に示す「妥協案(譲歩案)」が、次に解説する「最悪のケース」と同じではいけません。

というのも、先程解説したとおり、お互いに案を出し合いながら進める「交渉(話し合い)」である以上、調停で考え得る「最悪のケース」は、最初から出すべきではないのです。

最悪のケース

「調停」を会社側(使用者側)の有利に進めるにあたって、もう1つ考えておかなければならないのが、「最悪のケース」です。

つまり、「このライン以下の解決であれば、『調停』ではなく徹底的に争う。」というラインです。

労働審判は、早期解決を目指す制度なので、証拠を十分に精査できない場合もあり、異議申立をして訴訟に移行したら結果が変わるという場合ももちろんあります。

「調停」に応じ続けた結果、あまりに「最悪のケース」に近い場合、「調停案」を蹴って徹底的に争うのも1つの手です。

「人事労務」は、弁護士にお任せください!

今回は、労働審判の中でも、最もよくある解決方法である「調停」について、会社側(使用者側)の有利に進めるために決めておかなければならないことを、弁護士が解説しました。

「妥協(譲歩)」というと、悪いこと、不利なことのように聞こえますが、「調停」で解決することには、会社側としても大きなメリットがあります。

労働審判の対応にお困りの会社経営者の方は、企業の労働問題を得意とする弁護士に、お早めにご相談ください。

「労働審判」の法律知識まとめ

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