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人事労務

労働審判を、会社側の有利に進めるための、弁護士の基本的な戦略

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労働審判は、労働問題のトラブルについて、裁判所で行われる「話し合い」を中心とした手続です。

裁判所で行われますが、一般の方が想像されるような「裁判」よりも、「話し合い」に近い制度です。そのため、「交渉ごと」であり、交渉の戦略が必要です。

労働法の保護によって、しっかりとした事前準備をしておかなければ、労働審判は会社側の不利な流れで進むことも少なくありません。

今回は、労働審判を、会社側の有利に進めるための基本的な戦略を、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士が解説します。

1. 労働審判は交渉

会社側で、労働審判を行うとき、まず重要なのが、「労働審判は交渉である。」ということを理解することです。

労働審判のときに、判断の基準となるのは、労働法をはじめとする「法律」です。

しかし、冒頭で解説しましたとおり、労働審判は話し合いを基本とする交渉ですから、「法律」だけによる解決ではありません。

「法律」のみを武器にした形式ばった交渉をしては、せっかくの柔軟な解決、落としどころを逃してしまうおそれがあります。

2. 労働審判を行う会社側のメリット

労働審判は、労働トラブルの中でも、会社側にも利用するメリットのある制度です。

労働者から突然労働審判を申し立てされると、一方的に労働トラブルに巻き込まれたかのようなお悩みを抱える経営者の方も少なくないでしょう。

しかし、訴訟や団体交渉に比べて、労働審判で労働問題を解決することは、会社側にもメリットがあります。

2.1. 短期間で労働問題を解決できる

労働審判は、労働者の生活の保護のために、訴訟よりも短期間で労働問題を解決するための制度です。

これは、逆に会社側にとっても、労働問題をできるだけ早く解決できることをも意味しています。

労働問題を、訴訟で争うとなると、1年程度、もしくはもっと長い期間がかかることも少なくありません。これに対して、労働審判は、平均審理期間が70日程度と、非常に短期間で解決できます。

2.2. 最悪のダメージを回避できる

労働問題にとって、最悪のダメージは、「問題社員を労働者として雇用し続けること」です。

ご存じのとおり、「解雇権濫用法理」というルールによって、労働者に対する一方的な解雇は制限されているため、労働者として雇用し続けることは、常にリスクを抱え続けることを意味します。

これに対して、労働審判では、金銭解決によって退職をしてもらう、という解決となることも多いため、会社側にとって、最悪のダメージを回避することができます。

3. 会社側に不利な状態での「準備」が重要

労働問題は、特に労働審判を申し立てられるようなケースでは、会社側に不利な状態からはじまるとお考えください。

というのも、労働法は、基本的には労働者を保護する内容となっていることから、会社側が、より慎重に準備をしなければならないからです。

会社側に不利な状態からはじまる労働審判を、有利に解決するために、事前の準備が欠かせません。

3.1. 時間制限がある

労働問題について、労働者側には、法的な時間制限はありません(賃金請求、残業代請求の時効は2年ですが。)。

労働者側は、労働審判を申し立てる前に、十分な準備をし、万全の状態で労働審判に臨むことができます。

これに対し、会社側は、労働審判の申立てを知ったときには、既に準備の時間が1か月程度しか残されていないことが通常です。

この期間内に、裁判所の指示する期限までに答弁書を提出し、会社側の反論を、十分に裁判所(労働審判委員会)に伝えなければなりません。

3.2. 裁判所から送付された書類を検討する

以上のとおり、会社側で労働審判に対応するときには、時間制限があり、準備の時間があまり長くないことを意識し、スピーディな対応が必要です。

会社側の労働審判への対応の第一歩は、裁判所から送付されてきた次の書類を詳細に検討することから始まります。

  • 労働審判申立書の写し
  • 労働者側から提出された証拠の写し
  • 期日指定、答弁書作成期限の書かれた呼出状

裁判所から送付されてくる、労働審判に関する各書類の、検討のポイントは、次のとおりです。

3.2.1. 労働審判申立書

労働審判申立書には、労働者側の主張のポイントが書かれています。

会社として、経営者として、お読みになれば腹の立つこと、事実と違うとお考えのことが多いかもしれませんが、相手がどのような事実認識のもとに、どのような法的主張をするかを理解してください。

3.2.2. 労働者側の証拠

労働者側の証拠を精査することにより、労働者側が認識している事実のうち、どの部分に証拠があるかを理解することができます。

会社側の反論を考えるにあたって、明らかな証拠と反するような反論は、信用性がないと思われてしまいます。労働者側の証拠にも合致する、客観的な証拠に整合する反論を組み立てるようにします。

3.2.3. 呼出状

呼出状によって、第1回期日と、答弁書の提出期限を知ります。必ず、期日には出頭できるよう予定調整をし、締切に間に合うように答弁書を提出しましょう。

やむを得ない事情によってどうしても出席できない場合には、できる限り早めに裁判所に伝えます。

3.3. 第1回期日前の準備が最重要

労働審判の特長は、「早期解決」です。これは、労働者側はもちろん、会社側にとってもメリットの1つとなります。

しかし、その分、労働審判では事実の確認、審理に使える時間が限られています。具体的には、第1回期日でしか、事実関係の確認はされないことが一般的です。

重要な事実、これを証明する証拠があるのであれば、第1回期日までに全て提出しておかなければなりません。また、重要な証人がいる場合は、第1回期日に同行する必要があります。

4. 答弁書作成のポイント

ここまでお読み頂ければ、会社側で労働審判に対応するときには、第1回期日までの準備と、第1回期日の対応が、決定的に重要であるとご理解いただけたことでしょう。

そして、第1回期日前の対応の中で、会社側として特に重要なのが、「答弁書」です。労働審判では、第1回期日に口頭で伝えることが重要であるものの、事前に書面で分かりやすく伝える必要があるからです。

会社側で労働審判への対応をするにあたって、答弁書作成のポイントを、弁護士がまとめておきました。

  • 労働者側の申立書の内容を法的に分析する。
  • 労働者側が主張する事実関係が、存在するのかどうかを調査する。
  • 労働者側の提出する証拠が、立証として十分かどうかを分析する。
  • 労働者側の提出する証拠と矛盾せず、会社側で立証可能な事実を理解する。
  • 会社側で立証可能な事実をもとに、法的な反論を組み立てる。

会社側で労働審判へ対応するときは、これらのことを全て、期限までにスピーディに進めなければならないため、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士に、お早目にご相談ください。

5. 期日対応で、会社側を有利にするポイント

労働審判は、期日でのやり取りが非常に重要となります。これは、冒頭で解説したとおり、労働審判は「交渉(話し合い)」の手続きであることからも理解していただけるでしょう。

そこで、労働審判期日での対応によって、会社側を有利にするためのポイントを、弁護士が解説します。労働審判は、原則として3回までの期日の間で解決します。

5.1. 第1回期日が重要

労働審判では、第1回期日でしか、事実の確認がされないことが一般的です。

具体的には、第1回期日には、当事者、関係者が同席し、裁判所からの質問に対して回答をする形で事実確認を行います。

答弁書のイメージが悪く、第1回期日の印象も最悪だと、その後に予定される2回の期日では、会社側に有利な解決へと進めていくことはもはや不可能と言わざるを得ません。

特に、第1回期日で、次のような行動を会社側、経営者が行ってしまうと、非常に問題のあるブラック企業だという印象を抱かれる原因となります。

  • 客観的な証拠に明らかに反する事実主張を行う。
  • 労働法では明らかに認められない法的主張を行う。
  • 法律に基づかず、感情論で話を進める。
  • 声を荒げたり、乱暴な態度をとったりする。

また、話し合いによる解決となる場合を想定して、第1回期日までには、だいたいの落としどころについて、どこまで譲歩することができるのかを、弁護士と話し合っておきましょう。

5.2. 第2回、第3回に会社側が行うべきこと

労働審判で想定される3回の期日のうち、第2回、第3回では、第1回期日で確認された事実や証拠をもとに、調停に向けた話し合いを行います。

第1回期日で、事実や証拠についての主張立証が不十分であったとしても、ここから覆すのは困難です。

労働審判委員会の大まかな心証に基づいて、調停案を提示され、調停の話し合いが進みます。

第2回期日、第3回期日は、一般的には2,3週間程度きざみに設定されますので、早急な準備や、会社での検討が必要不可欠です。

5.3. 異議申立をすべき?

ここまでの流れの中で、期日中に調停が成立すれば、「裁判上の和解」と同一の効力を有することとなりますから、これにて労働問題は解決となります。

話し合いによって解決できない場合には、裁判所(労働審判委員会)が、「審判」という判断を下します。ただ、「審判」は、調停案と同様のことがほとんどですから、会社側としては、できれば調停で終了させたいところです。

会社側に不利な「審判」が下ってしまったとき、異議申立を行うべきかは、次のポイントをもとに、弁護士と慎重に検討します。

  • 「異議申立」は、労働審判の告知された日の翌日から2週間以内に行う。
  • 「異議申立」をすると、労働審判申立のときに訴訟提起したこととなる。
  • 「異議申立」をした後、「訴状に代わる準備書面」を提出する必要がある。
  • 労働審判は非公開だが、訴訟は公開となる。

6. 会社側の再発防止が重要

会社側で労働審判を対応するときには、労働審判が終わった後の再発防止の対応が重要です。

労働者側から労働審判を申し立てられてしまうということは、会社の労務管理、制度が十分ではなかった可能性が高いといえます。

残業代や不当解雇などの問題が労働審判になってしまった場合には、就業規則や雇用契約書の基本的なリーガルチェックなどからはじめ、会社の法令遵守を徹底しましょう。

特に、会社の制度上、未払い残業代が常に発生してしまうような場合、他の社員(従業員)から集団で請求される前に、早急な対策が必要です。

7. 会社側で労働審判に対応する弁護士の選び方

最後に、会社側で労働審判の対応をするときは、弁護士へのご依頼が重要ですが、弁護士にも得意・不得意があります。

特に、「会社側」の立場で、労働審判の対応を得意としている弁護士を選ぶ必要があります。

7.1. 労働法の知識が豊富か

労働法の知識が豊富であるかどうか、相談時によく確認しましょう。

会社側の立場に立った考え方がきちんとできているかは、特に注意すべきです。

7.2. 弁護士費用が適正か

弁護士費用が自由化されたことから、法律事務所、弁護士ごとに、労働審判に対応する際の費用は異なります。

会社側で労働審判の対応をする場合、定額の料金を提案する事務所が少なくありません。費用が適正であるかどうか、きちんと比較検討しましょう。

7.3. 説明がわかりやすいか

労働法に詳しく、解決実績が豊富にあったとしても、会社の社長、担当者への説明のしかたがわかりにくい弁護士には依頼すべきではありません。

特に、労働審判の場合、期日での対応は、会社の担当者や社長が行う必要がありますから、事前の弁護士への相談で、対応方法をしっかり理解しておかなければなりません。

7.4. 担当弁護士が頼りになるか

最後に、担当となる弁護士が頼りになるかどうかは、法律事務所自体の解決実績とは別に考えておく必要があります。

特に、会社側で労働審判を対応する場合には、経営者側の考え方を理解できる代表弁護士もしくはパートナー弁護士に対応してもらいましょう。

8. まとめ

今回は、会社側の立場で、労働審判に対応するときに、注意しておくべきポイントを、弁護士が解説しました。

労働審判は、会社側としては不利な状態からのスタートである上、準備の期間は非常に限られています。

できる限り有利な解決に向けて、スピーディに準備をするためにも、企業の労働問題(人事労務)を得意とする弁護士に、お早目にご相談ください。

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